一歩踏み出すちっぽけな勇気

闘魂期間も本日をもって終了。
この期間はすべての業務の中で生徒対応が最優先となってしまうので日々ブログを更新出来ていない。
ただ、生徒たちには『頑張ろう!』と言っているので私も頑張らなければならない。
 
昨日、第6回五ツ木模試の成績表が届いた。
生徒たちに成績表が入った封筒を手渡した。
生徒たちは恐る恐る成績表を確認しながら様々な表情を浮かべていた。
 
Daichi上牧中3生メンバーに夏明けから加わったSさんという生徒がいる。
Sさんとの出会いは夏期講習直前の日だった。
お母さまから今からでも中3を預かっていただけますかとのお問い合わせであった。
 
基本的な学習に関する型を徹底させるのが私たちの指導スタイル。
レンガを組み合わせるように、一つずつ積み上げていく指導であるため一定の時間を要する。
ただ、『高校入試』という一区切りに間に合わせなければならない。
 
だから、中3以降のご入塾を希望される方には少々慎重になってしまう。
この限られた時間の中で私たちのノウハウを用いてお預かりするお子様を希望の高校へと導いてやることができるのかと。
そして、それは受け入れるお子様や保護者にも理解していただなければならない。
中途半端な想いでは成績は上げられない。
 
Sさんは他塾に通っていたのだが、この夏休みが最後のチャンスだと思い転塾することを考えているみたいだった。
成績状況や普段の学習時間量などをお母さまから聞くと、到底受験生のそれらではなかった。
先ほどの理由でお断りすることも考えた。
だが、お母さまが何とか出来ないでしょうかとお願いされたので私は三者懇談を実施することにした。
 
Sさんとの初対面。
髪の毛は茶髪だった。しかも結構明るめの茶色。
『人は見た目で判断してはいけない。』と言うが、やはり『中学生としての正しさ』みたいなものは必要だと私は考えている。
それに、Daichi上牧は『心地よい緊張感の中で学習する場』だ。
学校と同じ雰囲気を持ち込まれては困る。
何よりも、現在Daichi上牧に通ってくれている生徒、あるいはDaichi上牧を巣立っていった子たちに示しがつかない。
私は三者懇談中、そういった色々なことを考えた。
 
中3のこの時期の受け入れ。
もちろん、夏期講習参加のみならず9月以降の継続入塾もある程度考えておられる。
中3生にとって夏休み前は最後の塾選びの期間なのだ。
 
塾のシステムについて一通り話をし終えた後、私はSさんに一つだけ約束をした。
 
「明日の講習初日までに髪の毛を黒くしてきなさい。そうでないと受け入れは出来ない。」
 
Sさんは、「分かりました」とボソッと一言だけ言った。
 
長年、塾講師をしていれば目の動き、表情、様子などを見れば、目の前の生徒が頭の中でどんなことを考えているかはある程度予測できる。
 
『五分五分かな。もしかすると四分六分で講習会は参加しないかなぁ。』
私のSさんに対する予測はそんな感じだった。
 
次の日、Sさんは約束した時間通りに塾にやってきた。
髪の毛の色は真っ黒だった。
これには私は驚かされた。
私の予測は良い意味であっさりと裏切られた。
 
『この子は大丈夫。最後までやり切れる。』
彼女を髪の毛を見て、私はそのように確信した。
 
今まで幾度となく中学校の先生には注意をされてきたのだろう。
それでも『自分を変える』ことが出来なかった。
あるいは『自分を変えようとしなかった』のかもしれない。
そんな彼女が、昨日初めて出会った塾の先生との約束を果たしてきたのだ。
これは紛れもない『彼女の意思』だ。
 
誰にでも失敗はつきものだ。
『正しさ』が眩しすぎて受け入れることが出来ない、そんなしんどい時期だって長い人生の中で多々あるだろう。
その中でも何かを変えたいと『ちょっとした勇気』を振り絞ることがある。
決して他人には気付いてもらえないようなちっぽけな勇気。
しかし、周囲の大人はそのことに敏感でなければならないと私は考える。
以前の記事にも書いたが、『目の前にたくさん転がっているチャンス』を周囲の大人が拾ってあげることも時には必要なのではないか。
 
Daichi上牧で変わってくれればそれでいい。
まだ出会ったことのない自分とDaichi上牧で出会ってくれればいい。
私たちはそのサポートがしたいのだ。
 
講習会初日から彼女には度肝を抜かれた。
それは髪の毛の色だけではない。
とてつもなく努力をしてくるのだ。
小テストに向けてノートに何度も何度も練習してくる。
授業中に行う小テストも満点を狙いにくる。
 
夏期講習も無事に乗り越えた。
夏期講習後に三者懇談を実施した。
今後の話をすると、「この塾で最後まで頑張りたい。」とのことだった。
講習会前の三者懇談同様、ボソッと言っていたが、表情は大きく違っていた。
 
彼女は決して口数が多いタイプではない。
ただ自分にとって必要なことは相談してくる。
最近は、少しづつではあるが質問もし出した。
質問が出るということは真剣に学習に取り組んでいる何よりの証拠。
 
そして本日の五ツ木の結果。
「先生、結果見てください。」
彼女はそう言って私に成績表を手渡した。
その時の彼女の表情はどこか自信なさげなように見えた。
正直に言って、それほど結果の伸びはなかった。
彼女にはほんの少しではあるが、『焦りの様子』が見受けられた。
『このままではマズイ…。』そう言った表情だった。
 
私は成績表の中身を確認してから彼女に言った。
先生はこの結果はなーんにも気にしていないぞ。
お前のゴールはあくまで高校入試やから。そこまでに成績は伸ばし切ればいい。
真剣に勉強し始めてまだ時間が浅いわ!
 
Sさんは少しニコッと笑ったように見えた。
いつもマスクをしているのであまり表情はよくわからないのだが、たしかに少し落ち着いたようには見えた。
 
秋の実力試験も終了。
定期考査も終了。
いよいよ、志望校から受験校へと変わっていく。
Daichi上牧生が自信をもって受験に臨むことが出来るようにスタッフ一同で彼らをサポートしていきたい。
 
進学塾Daichi上牧 代表 堀居邦彦
 

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